ずっと誰かが手でマイクを持ってくれているような雰囲気 | obanamicrofone 尾花マイク

ずっと誰かが手でマイクを持ってくれているような雰囲気

菅原慎一さん

G5×ギター

昨年6月に解散を発表したバンド、シャムキャッツではリードギターを務め、現在は自身のバンド、菅原慎一BANDを率いるミュージシャンの菅原慎一。ギタリスト、ソングライター、プロデューサーなど様々な形で音楽活動を続ける一方、ラジオや自身のポッドキャスト、トークイベントやZINEを通じて、アジアのカルチャーの紹介者、カセットテープ愛好家、カレー愛好家としても多彩な活動を展開している。今回は特に管楽器も含む大人数編成の菅原慎一BANDでのマイキングに苦労しているという彼に、オバナマイクを使ってみた感想、ギターへのこだわり、“アコースティック”というスタイルについて思うことを聞いた。

--オバナマイクを使ってみた印象を教えてください。

菅原 ダイナミックマイクでちゃんとマイキングをしているライヴやレコーディングの現場のような、よく録れているときの音がずっと安定してストレスなく出るなという印象です。つまりベストということですね。

尾花 ありがとうございます!

--いまもお持ちのギターにつけたんですよね。

菅原 はい、これは中2から使っているフォークギターです。W-30という、そんなに高い機種ではないんですけど、アコースティックギターってやっぱり木なので、本当に自分の体の一部みたいになっちゃうんですよね。だから、こだわりがないようですごくあるというか。声の一部みたいな感じで大切にしてきたので、ライヴや録音で使ったりもするんですけど、絶対に穴は開けたくないと思ってます。

--エレアコではないので、オバナマイクだけで音を拾ったということですね。

菅原 そうですね。要するに、僕が求めてたものが本当にバランスよくある。ピエゾタイプのピックアップとかは、鎧をつけるような雰囲気があったりするんですけど、これ(オバナマイク)は例えばずっと誰かが手でマイクを持ってくれているみたいな雰囲気でした。尾花さんの手がずっと押さえてくれているみたいな。手作り感もあるし、すごくいいなと思います。

--全体的な雰囲気を含めて、あまり加工感なく使えると。

菅原 それはかなり大事だと思います。あとアコギを弾く人って、ある種の造形美というか、アコギを抱えた姿、そのスタイルを含めて気にしてる人が多くて。やっぱりピックアップをつけると、どうしてもそこも変わっちゃうじゃないですか。これはそれがあんまりなくて、全然目立たなくて、本当に自然なんです。僕はピエゾが苦手なんですよ、なんか『AKIRA』みたいな、人造人間みたいになっちゃう感じで。ライヴでエレアコを使うこともたまにありましたけど、やっぱりかなり人工的な音なんです。エレアコは別の楽器だと思っているくらいなので、元からそういうサウンドメイキングをして、そういう曲を作っちゃいますよね。だから、これを手にしたことによって、僕の中の創造性みたいなものが広がった感じがします。それはプレイヤーだけじゃなく、アーティストにとってもすごく大事なことだと思います。

--今までは、たとえば菅原慎一BANDのライヴはギターの前に立てたマイク一本で?

菅原 そうですね。ダイナミックマイクのBETA58とか57とか一本で。PAはいつも苦労してました。僕のバンドはいっぱいメンバーがいるので、そこはかなりシビアな感じになっていました。

--いつも大変そうですよね。管楽器もいるし、キーボードとかも結構いろんな楽器を触ってますし。大変なのに、色んな所でやるじゃないですか。

菅原 ライヴハウスだけじゃない時代ってとっくに来てるじゃないですか。だからマイキングの問題はずっとあって。(オバナマイクは)アコースティックサウンドだけど、バンドでやりたいって人にはめっちゃいいと思います。

--菅原慎一BANDの他の方にも使っていただけるかもしれないですね。オバナマイクは管楽器用のマイクはあんまりないんだっけ。

尾花 在庫は抱えてないですけど、特注で作ってます。

菅原 打楽器のやつとかありますよね。

尾花 はい、パンデイロ用のです。打楽器は音域が広いので、高域と低域が両方拾えて、すごく動いても大丈夫なものを、ということで頼まれて作ったマイクです。それは今はウェブでも販売してます。

菅原 菅原慎一BANDはフルートとファゴットがいるんですけど、フルートは普通にマイクを立てていて、ファゴットは自前のやつ持ってますね。ピンマイクかな。

--菅原さんのアコギ用のマイクは、持ち込みじゃなくてライヴハウスにあったものですか。

菅原 自分は持ち込みはボーカルマイクだけですね。ダイナミックマイクが好きなので、(オバナマイクは)そこも良かったです。コンデンサーマイクって繊細なのですごく気を遣うんですよ。

--録音の話をお聞きしたいんですが、『ドンテンタウン』のサントラはギターももちろん入ってますよね。

菅原 はい。あれもこのギターです。

--録音は宅録もありましたか。すべてスタジオですか。

菅原 すべてスタジオで、オープンリールのテープレコーダーでアナログレコーディングというかなり特殊な環境でした。映画のコンセプトと世界観を統一したんです。アコギもマイクを立てて、ダイナミックマイクで録りましたね。

--去年の夏頃でしたっけ。

菅原 そうです、懐かしいですね。また別の仕事でも同じスタジオで動いていて、やっぱりあったかいアコースティックなサウンドって求められてる気がしてます。

--菅原さんの音楽の中で、アコースティックというのはどれくらい大事なものですか。元々アコースティックからはじまっているところがある?

菅原 それはかなりありますね。精神的な事になっちゃうけど、Do it yourself精神が基本的に好きで、そういうものづくりの姿勢が、アコースティックということだと思うんです。バンドだったら、4人が集まって同じ空間でせーので音出すってことは、ある意味でアコースティックというか。そういうところから始まってますね。

--アコースティックギターがメインとか、シンセサイザーをあまり使っていないという意味での、狭義のアコースティックな音についてはどうですか。たとえば菅原慎一BANDの音楽に関して。

菅原 電子楽器とか、シンセサイザーもアコースティックな使い方をしているというか、アコースティック楽器の一個として構成しているということかなと思っています。あとは菅原慎一BANDは、本当に手の届く範囲のことを友達と一緒にやるみたいな感じなので。お茶を飲むような感じで集まって、そこで音を出すということがアコースティックなのかなって。

--アコースティックというスタイルで、目指しているところはありますか。

菅原 細野(晴臣)さんですかね。あの人はいろんな音楽の旅をずっと続けてるけど、キャリアを突き通す軸になってるのがアコースティックなのかなと思います。僕はアンビエントとかも、アコースティックだと思ってるので。本当に憧れますね。

--逆に、菅原さんが好きなもので、アコースティックじゃない音楽ってあるんでしょうか。

菅原 僕がミックステープを作っていた、80〜90年代のマンドポップスは、人工的というか、レトロフューチャーみたいな感じがしますね。それにもロマンを感じちゃうんですけど。

--理想のアコースティックギターの音はありますか。

菅原 『ギター・マガジン』の「ニッポンの偉大なギター名盤」という企画に僕も参加してるんですけど、そこであげたのは高中正義さんの『SEYCHELLES』でした。高中さんのアルバムはアコギの音もエレキの音もすごく好きです。リズムセクションがめちゃくちゃすごいんですけど、それに絡むようなギターなんです。トーン感とかエアー感とかすべてがいいですね。ギターの音のいいとこ取りの応酬みたいな感じで。後はフィッシュマンズとかもギターの音がめっちゃ好きです。ガットギターが好きなボサノバの名盤とかもありますけど、やっぱりそういうものより、ある程度湿度を持ったギターの音が好きですね。

--インタヴューではよくネオアコの話も出てきますね。

菅原 ネオアコはもう、アコギがパーカッションみたいなものなので。何でもいいと思いますよ。それこそマイクは何でもいいんじゃないですか(笑)。マイクっていうよりは気合とエフェクト。エフェクトは大事なんで。

--ブラジル音楽の入り口も、意外とギター音楽としてではなかったんでしょうか。

菅原 そうですね。ムードというか、コードの響きとか、リズムですよね。そういう構造から興味を持ちました。それこそ菅原BANDとかでは、そういうこともちょっとだけやったりとか。

--これまでに観たライヴで、出音が特に気持ちいいなあと思った演奏はありますか。

菅原 忘れられないのはサンフジンズとやったときの、奥田民生さんの出音がやばかったですね。あれはマジでやばかったです。めちゃくちゃ良くて。同じギターを使い回して演奏するときに、民生さんが弾くとなんかすごいんですよね。梅田のクワトロだったんですけど、多分一番いい音でした。

--菅原さんにとって、いま一番気持ちよく響く音はどんな音でしょうか。

菅原 自分が出せる音と出せない音というのがあって、自分がリスナーとして求めている音、たとえば僕がミックステープを作ったりしている音は、どうしても現実的に今から手を伸ばしても触れることのできない時代のもので、そういう音にロマンを感じて楽しんでる行為なんですよね。だから、自分で音を出してみようってなったときに、それは絶対できないんですよ。ある種その二つの間で、反動が常に起こっている状態が続いています。でも最近は、その境界線が全部ぼやけてきてるかもしれないですね。もう1回、自分で音を鳴らしてみたいなという気持ちはあるかもしれないです。友達が作った音源とかも、普通に気持ちいいなと思いますしね。